COLUMN

2019.5.28

引き算のデザイン

引き算のデザイン

今週のコラムはこんな事をつづってみようと思います。

最近、断捨離にいそしんでいる今日この頃ですが、そんな中、諸先輩方と深いお話しをして、そこから改めて考えさせられた「削ぎ落とすこと…」について。。そして、そこから見える世界は…。なんだか今の自分にしっくり来るお話しを聞けました。

そんなこんなで、今回は「引き算のデザイン」についてのコラムです。

建築家であり、空間デザイナーである水谷荘市さんと先日ゆっくりとお会いすることが出来、そこで色々なお話しを聞きました。いつもの事ながら時代の先を生きてる先輩達のお話しは自分にとって大変貴重ですが、特に水谷さんのお話しはとっても刺激的でしたので、しっかりとつづっておこうと思います。

水谷荘市さんとは、昨年「和紙屋」http://www.washiya.comという杉原商店さんの築百年以上経った蔵を改装してギャラリーを作るというプロジェクトでご一緒させて頂いた経緯がありまして。そんな水谷荘市さんの経歴を改めてお伝えしておきますと、1955年 福井県生まれ。1979年 Plastic Studio & Associates 入社。1987年 水谷壮市デザイン事務所設立。エルメスジャポンの日本国内の全てのオフィスデザイン、ファッションデザイナー高田賢三氏のパリの自邸のほか、複合商業ビルなどの建築設計、店舗やオフィスなどのインテリアデザインなどを手がけ、日本国内だけでなく、パリやインドネシア・ジャカルタなど、現在でも精力的に国内外で活躍されている方です。そんな水谷さんから「引き算のデザイン」についてと、それに行き着いた理由を教えてもらいました。

水谷さんは20代の頃に仕事でパリに行ってた際に、現場から車で帰る途中、パリで見た建築物を思い返しながら、ずーっと自分らしいデザインって何だろうって考えていたそうです。そんな中で、あーってひらめいたのが、西洋の足し算のデザインではなく、日本の引き算のデザインこそが自分がやるべきデザインだと。そして、光こそが自分らしいデザインだと気づいたそうです。

水谷さんは、20代という若かりし日にデザイナーとしての方向性をしっかりと気づき、そこから水谷さんらしい、他には無いデザインを数多く生み出していきました。そんな中で自分が最も好きな水谷さんの作品は「Bar Yuki」です。


https://soichi-mizutani.com/works/interior-bar/baryuki/

この照明のなんとも言えない温かい色は、水谷さんが幼い時に雪の中で遊んでいたときに、その日の夕日の光が雪を透して現れてきた光の色であり、水谷さんが自分らしいデザインを追求していた時に、自分の根底にある幼少期の記憶をデザインしたものだそうです。

同じ福井で育った自分も、この淡く温かい雪を透した夕日の色は幼い時に経験していて、とても共感出来ます。だから凄く好きな作品であり、また幼少期の奥深い記憶をデザインに落とし込める水谷さんの純粋さに感動させられます。

そんな水谷さんと話していて面白かったのが、現代における通信システムが電子レベルから、いずれ分子レベルに変わっていく際の話しや、今後AIなどに起こる事は「進化」と言ってしまうと、「進化」⇄「退化」となってしまうけど、「変化」だと受けとめるといいんじゃないかと…。これは自分も凄く思うことであり、AIが進むことで人間が退化していくんじゃなくて、そうなるべきしてなる事であり、テクノロジーはごく自然に人の生活に馴染んで共生していくと思っているので、そのテクノロジーの良い点を理解し、活用していくことが大切だと思います。例として下記の対談の映像は、自分がとても共感した映像です。

未来はディストピアか? ユートピアか?:ケヴィン・ケリーとの対話
ー『WIRED』創刊エグゼクティヴエディターを務めたケヴィン・ケリーが語る未来 ー


水谷さんはAIとか5Gなんかの先を見ていて、分子レベルのお話しから過去の日本の歴史背景まで語れるその知見が凄すぎて、自分の周りの若いクリエイターにも是非話しを聞いてもらいたいなぁーって思いましたので、今後、何かしら企画してお話しを聞ける会を催したいなと思います。

そんな水谷さんが、自分らしいデザインを追求し、幼い時にまで遡って行きついた「引き算のデザイン」。成熟した現代において、情報・商品・催し… そんなモノやコトが溢れた世界の中で、改めて集客やブランディングを考えると、もっともっと引き算をしていって、企業や商品の本質を徹底的に洗い出し、本当に必要な事は何かを導き出すことが大切だと思いました。

そうしていくことで、現代の膨大な情報社会の中で埋もれることなく、必要とされるサービス、商品、人になれるような気がします。それが独自のアイデンティティになり、ブランディングに絶対繋がると思います。

水谷さんのお話しを聞いて、改めて自分達も「引き算のデザイン」に取り組んでいこうと思います。




内田裕規


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内田 裕規

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